パケージメディアとしてのSDカード

コンテンツの視聴には①タイムシフト②プレイスシフト③デバイスシフト可能であることが理想的であると言われますが、デバイスそのものがテレビ、PCそしてモバイル端末に絞られてきた現在、デバイスシフト(デバイス間をコンテンツが自由に移動)の実現がタイムシフトとプレイスシフト実現のカギと言っても良いのではないでしょうか。 デバイスシフトを実現するには、主として(a)コンテンツを複製=Copyする方法と(b)移動=Moveする方法とがあります。 (a)Copyは著作権保護の観点からは問題があります。 (b)Moveの方は利用者に取って馴染みが薄く、操作も不便です。

 

実はデバイスシフトを実現するための第3の方法が有ります。 それはメディアを使ってデバイス間で共有する方法です。 この場合そのメディアはデバイスフリーである必要があります。 DVDがモバイル端末で使用できない今、その期待に応えられメディアはSDカードではないでしょうか。 SD(SecureDigital)カードは本来的に著作権保護や情報漏えいを防止する機能を備えた記憶媒体です。ただこれまではその大容量のみが注目され、コンテンツメディアとしての機能が注目されることが無かったと言えます。 従ってこれまでSDカードをDVDの代わりに使おうと言う発想もなく、せいぜいワンセグ放送の録画フォーマットやテレビ録画の持ち出し用にSD-Video規格というものが定められているだけだったのです。

 

コンテンツメディアの要件は①メディアコストが安いこと、②再生環境が整っていること、③コンテンツ制作ツールと再生ツールが用意されていることです。 実はSDカードに不足しているのは③のみなのです。①は実現の可能性は高く、②SDカードが各種のデバイスに採用されていることはご承知のとおりです。NEXTMEDIAが目指すものは、再生環境の普及とそれに依って可能となるであろうコンテンツの登場なのです。そのためにはコンテンツ制作ツールが必要です。 むろん再生環境を普及させるには、まずコンテンツがなければなりません。現在存在するコンテンツは想定1,000万台を超える番組録画装置から作り出される「持ち出し」用の録画番組です。 つまり録画番組として存在するコンテンツ市場へのNMリ-ダ-の普及がカギとなるのです。

 

これからはパッケージではなくネットでしょう、とお考えの方も居られると思いますが、彼の音楽コンテンツですらパッケージとネットの市場規模(金額)は未だに5:1なのをご存知でしょうか。 電子書籍に至っては47:3でしかありません。 最もパッケージと言っても紙の本というパッケージと電子の市場規模ではありますが。 既にデジタル化されている音楽コンテンツが未だにパッケージで売れるのは、それがより具体的であるからではないでしょうか。 つまり目に見え、手で触れ、いつでもバックアップ出来るからなのです。 そこへ行くと所有する事さえままならない電子書籍(「購読権」の購入)が音楽並みの地位を得るのにどれほどの年月を必要とするかは想像もつきません。 書籍はネット以前にデジタル化する事こそを本気で考える必要があるのではないでしょうか。

 

そもそもあらゆる情報メディア(この場合は媒体ではなく、文字、画像、音声、映像などの情報の形態のこと)がデジタル化されつつある現在、メディアは一括してクロスメディアとして扱うことが出来る様になりました。 したがってそのクロスメディアで構成されるコンテンツの制作ツールとその表示再生ツールが有れば、書籍的なコンテンツだろうがDVD的なコンテンツだろうが、はたまた本来のクロスメディアコンテンツだろうが、全て共通の土俵(プラットホーム)に収まるものだと考える事が出来るのではないでしょうか。 私達はこれをクロスメディア出版と呼ぶことにしたいと思います。 クロスメディア出版には共通の制作ツールと共通の表示・再生ツール(ビューアー・ソフト)、そして表示・再生装置(ハード)が必要です。 また優良な出版物の著作権はきちんと守られなければなりません。 これら総体を保証し、実現し、促進する事がNEXTMEDIAの目的なのです。