Blu-rayとは一体何だったのか?

下記に日本映像ソフト協会が発表した資料が有る。 これに依るとパッケージメディアによるコンテンツの売り上げにおけるメディア別の割合は、金額ベースではBlu-rayが40%で、いまだにDVDが60%を占めている。 更に数量(枚数)ベースではBlu-rayが27%に対してDVDが73%と更に差が開いている。 2008年にBlu-rayが登場してから既に6年が経過した時点でこの状態である。 1996年にビデオカセットに対してDVDが登場したときは、5年後の2001年には金額/数量共にDVDがカセットを上回っていた。 このときの再生環境はと言うと、2001年のDVDの国内出荷数の累計はたった250万台である。(電子情報技術産業協会=JEITA資料) 更にレンタル市場を見てみると、DVDの93%に対してBle-rayはわずか7%である。 2014年までのBlu-ray再生装置の出荷累計は、2001年時点のDVDの再生環境の10倍以上の2,600万台である。(同じくJEITA資料) 詰まるところ、この2,600万台の大半の目的は録画再生用であり、パッケージタイトルの主流はセル物もレンタルもDVDであり、Blue-rayの多くはひたすら熱心なマニアに支えられていると言うことが言えるのではないだろうか。

 

ただカセットビデオからDVDへの移行とDVDからBle-rayの移行とは同じ次元では比較できない事情が有ることも見ておく必要はある。 その事情は主に2つ有る。 一つはテープと言うメディアから光学式メディアへの移行と光学式メディアから同じ光学式メディアへの移行という事情の違いである。 もう一つは標準解像度(SD画質)と高解像度(HD画質)の違いである。 メディアに関して言えば、カセットテープの取り扱い難さの比べてDVDの扱いやすさは画期的であった様に思われる。 更にそれに加えてアナログ方式がデジタル化されたことに依り、デジタル規格で言えば、解像度が320x240pix.のものがその倍の720x480pix.になったわけで、そのインパクトは大変なものであった。 それに対してDVDからBle-rayへの移行は、言うなれば解像度の向上だけが売り文句と言う感じであった。 実際にはBle-rayの規格はそれだけではなかったのだが、その他の機能に関する規格はほぼ規格倒れに終わったと言ってよいかと思われる。 解像度に関しては既に触れたようにテープからDVDへの移行ではタテ・ヨコ夫々が約2倍強、つまり全体では4.5倍の解像度になった訳で、これは大いに支持を受けた。 一方DVDからBlu-rayへの移行は720×480が1920×1080なので6倍の解像度を実現した訳であるが、どうやら大騒ぎしたのは利用者側では無くて提供者側の方だったような気がする。

 

Blu-rayがDVDを凌駕出来ない理由の一つにコンテンツ素材の量の問題も有るかと思われる。 最近の撮影機器は高機能な物が行き渡り、プロだけでなく素人でも持ち歩くものは高解像度な製品になっているので、新しく登場するコンテンツは当然にも高解像度な物となる。 しかし過去に蓄積されたコンテンツはSD解像度以下のものであり、それらを高解像度で見せるためにはアップコンバートしなければならない。 つまり同じデジタル化するにしてもHD解像度の物にするよりはSD解像度のDVDの方がコンテンツ化はしやすい訳で、その分市販されているタイトル数はDVDの方がはるかに多いので、DVDの方が良く出回ると言うことも言えるのではないだろうか。

 

ところで、このBle-rayと言うメディアは日本独特のものと言っても言いすぎないほど特殊なものである事をご存じだろうか? メディア工業会は2013年に解散してしまったので、2013年以降の出荷に関する統計資料が無いが、それに依ると、2012年の時点ではあるが、DVDメディアの出荷量は日本が世界全体の24%でその他地域が76%となっているが、BD(Blu-ray)では日本が92%でその他地域がわずか8%となっている。 つまりBDとは日本独特の「ガラパゴス品種」とも言えるべきもので、とても世界的規模に於いて語られるべきメディアとは言えないのが実情である。 ビデオカセットやDVDが登場した時代はテレビが家庭の王様であり、据え付け型のデッキが主役の時代であった。 ところがBDが登場した時代は通信ネットワークの普及と相まってモバイル機器の時代が始まっていた。 つまりDVDの様な据え付け型の再生装置を前提とした製品コンセプトが主役の位置を譲りつつあるときに、またぞろ同じコンセプトの製品を多少の目先を変えて鳴り物入りで売り込んだ結果が現状と言うことだろう。 キーワードは「モバイル」であったのに「高画質」がキーワードと思いこんだ結果である様に思えてならない。