最近の動画コンテンツ市場動向調査資料を読み解く

ここに最近の動画市場の動向を示す資料がある。 動画の市場は従来からのパッケージメディアで流通するものとしてDVDなどで販売される「セル市場」、同じくそれらの「レンタル市場」、それからネット配信市場で構成されている。 ここではパッケージ流通に関する資料は日本映像ソフト協会発表の「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」に、また有料ネット市場に関する資料はデジタルコンテンツ協会発表の「動画配信市場調査レポート」に依っている。

明らかにセル物やレンタルなどのパッケージ市場は減少傾向にあり、またネット配信は増加傾向にあること が分かる。 ただしパッケージ物の減少分をネット配信の増加分が補完するまでには至っていない。 また ネット市場の構成比は22.2%で、未だにパッケージ物が78%を占めている。

 

ここで注目すべき動画配信であるが、インプレスの調査によると、有料動画配信サービスの利用者は2013 年の5.8%から2015年の7.7%と言うように3年間で1.9%増加している。 ただし有料ネット配信の利用者7%に対して無料配信利用者の割合は55.6%である。 つまりネット配信は利用しない人、及び利用して も無料配信しか利用しない人が今なお90%以上居ると言うことになる。

同じくインプレスの調査によるとネット動画の再生に使用するデバイスとしては、モバイル端末は増加傾向にあるのは事実であるが、いまだにパソコンが健闘している事が分かる。 つまりパソコンの存在感は圧倒的に大きい。

冒頭の動画市場の推移であるが、有料ネット市場の資料の出典をデジタルコンテンツ協会に、そしてパッケージメディア市場の資料の出典は日本映像ソフト協会に依ったが、日本映像ソフト協会の調査による有料ネット市場の資料も存在する。 ただし計算方法の違いに依るものと思われるが、その規模は2014年段階で614億円と少ない。 総務省の「情報通信白書」にある統計情報を参考にした場合1,255億円の方が近いので、便宜上デジタルコンテンツ協会の数値を採用している。

 

ただし以下の通り映像ソフト協会の調査資料でも興味深い内容が見て取れる。 同協会によるアンケート調査で、有料動画配信を利用したいか否かとの意向を調査したものである。

これは先のインプレスのネット配信についての調査と異なり、パッケージコンテンツの利用者を対象とした調査であるが、これによるとネット配信を利用したくないと答えている人が、セル利用者で69%、レンタル利用者で74%を占めている事になる。 これらの層は言わば「確信犯」とも言える層で、年々減少する傾向に有るとは言えパッケージメディア市場を支えている中核を構成している部分と言える。 更に調査では何故配信サービスを利用しなくないのかを聞いているが、要するにネット配信のコンテンツにはお金を出したくないと言うのが見て取ることが出来る。

以上の結果から言える事は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

① 動画市場はパッケージ市場が衰退しつつあるが、未だに70%以上を占めている。

② 動画生成用の機器は意外とパソコンが健闘している。

③ 動画市場に於いてはパッケージ市場がネット配信市場に順次置き換わっていくと言うよりもむしろ夫々の市場は別々の発展または変遷の経緯をたどりつつあると考えた方が良いかも知れない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と言うことではないだろうか。