ニワトリが先かタマゴが先か

文字、音声、画像、そして映像など情報は何らかの形態を伴います。その形態を我々はメディアと呼びます。 一方これらの情報を保存、伝達、表示する手段=媒体もまたメディアと呼ばれます。文字、音声、画像、そして映像などの情報のデジタル化は、必然的に情報のクロスメディア化をもたらすと同時にこれらを保存、伝達、表示する媒体の分業化をももたらしました。 記憶装置に依る保存、通信による伝達、ディスプレーモニターによる表示と言うように。 また人間は本来、より具体的なものに安心感を持つものです。 見えないものより見えるもの、触れないものより触れるもの、遠くのものより近いものと言うように。 情報に対しても同じで、例えば文字だけの情報なら紙に書かれたものに、携帯音楽プレーヤーで音楽を楽しむ人も家に帰れば、CDを持っていると言うように、より具体的な形が好まれるのです。

 

こんにち様々な情報がネットでもたらされるようになりましたが、その情報には当然にも表示装置が必要で、更にテレビにさえ録画装置が付いているように、情報には保存場所も必要です。 保存用のメディアと言えば、今やSDカードと言うことではないでしょうか。 場所を取らず、移動が自由で、駆動装置不要で、壊れず、大容量でしかも情報管理(セキュリティー)機能も備わっているからです。 確かに高速通信サービスが始まり、世の中はクラウドの時代へ向かってはいるようです。 しかし今はまだその過程でしかありません。 書籍のデジタル化率は未だ8%(2014年金額ベース)、高速通信は制限付き、WiFiのサービスエリアはごく限られているのが実体です。 つまり、正確にいえば我々は高速通信とクラウドの恩恵に浴する手前、その過程に居ると言う事ではないでしょうか。

 

その過程にあって、コンテンツの完全デジタル化、保存、伝達、表示という媒体機能の完全分離を実現するためには未だまだ記憶メディアが必要です。 しかも情報、つまりコンテンツのタイムシフト、デバイスシフト、プレイスシフトを実現出来るメディアとしてはSDカード以外考えられません。 この場合SDカードは、コンテンツが身近な所にある事、触れる事、そして所有出来ることを具現するメディアと言うことになります。 実はSDカードはハードディスクに代わり得る大容量記憶メディアであると同時に、DVD/ブルーレイに代わり得るパッケージメディアとしてのコンテンツの著作権管理機能も備えているのです。 ところが、これまでSDカードはポータブルな大容量の記憶メディアという側面だけが注目され、著作権管理機能を利用したパッケージメディアとしての側面が注目されて来ませんでした。 その理由は、SDカードの著作権保護規格に対応した再生環境が皆無に等しかったからです。 確かにカードスロットを搭載したPCや携帯端末は出回っていましたが、それ(著作権管理機能)に対応したアプリが皆無であり、従ってコンテンツも皆無という状態でした。 つまり再生環境が揃わないので、対応したコンテンツも出ようが無かったと言うことです。

 

唯一の例外はテレビ番組録画の持ち出しです。 録画番組をSDカードに持ち出せる機能を持った装置(ブルーレイ/HDレコーダ)の普及数は推定1,000万台は下らないと思われます。 それにも関わらずこれら録画コンテンツを再生できる装置、即ちPC並びに携帯端末は皆無に近い状態です。 でも見方を変えれば、これらの再生装置にSDカードリーダーと動画プレイヤーを提供する事により1,000万台分のコンテンツ生成市場は数千万台分の再生市場を持つことになる訳です。 いったん再生市場が生成されれば、更にそこへ新しいコンテンツが投入されるでしょう。 こうして、ニワトリと卵の関係と言われるコンテンツと再生環境の循環が生まれるのです。 NMリ-ダ-とNMプレイヤ-はそのニワトリが生まれる卵であり、卵を産むニワトリになりたいと思っています。